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株式会社東日本放送
技術局 放送技術部長
中谷 好孝 様

あすと長町とアドレスも新たに2021年9月20日にグランドオープンされた新社屋にてインタビューさせていただきました。2021年にインタビューのお約束を頂戴してから新型コロナウィルス感染症の影響による度重なる延期で弊社としても待ちにまったインタビューとなりました。

社屋の外観

Q1.貴社にとってテロップとはどういったものでしょうか。

番組情報、災害情報など視聴者様に詳しく情報を伝えるためにはなくてはならないもの。テロップがないと番組が成り立たない、何としても出したい、それ位重要なものと考えています。
またテロップシステムは、営放、報道支援、OTCといった様々なシステムと連携しており、放送システムとしても重要なものと認識しています。
当局は、他の地方放送局と比べて、毎日のテロップ制作・送出数も多く、情報番組はもちろん野球といったスポーツ番組でもテロップを重視しています。
(インタビュアー注:東日本放送様は他の地方放送局と比べ、テロップ送出系統数も多いです。その数、2倍[当社比])
テロップについては、文字やデザインといった見やすさももちろん大事ですが、放送に載せる情報の精査にも気を付けています。視聴者様がそのテロップを見た時にどのように感じるかといった目線を大切に日々テロップ制作に取り組んでいます。

インタビューの様子

Q2.貴社のテロップ導入の歴史を教えてください。

前社屋で1991年ぐらいからテロップ装置を導入したとのことです。当時はテロメイヤだったようです。
電子テロップシステムは、1996年にラムダシステムズ(以下ラムダ)製(GRID-5)を導入して以来、ずっとラムダ製を使用しています。
自分が関わったのは2007年の更新からです。SDからHDになり、テロップだけではなく映像や音声も全てHD化しました。その後、2015年の更新では系列局でアマ野球スポーツコーダーデザインの統一化も図られ、2021年の新社屋移転に伴う更新に続きます。
また、大掛かりな更新時だけではなく、使い勝手といった現場の要望を伝え、ソフトウェアの改修などで対応してもらっています。

制作現場イメージ

Q3.1996年にラムダ製品を初導入され、現在まで28年にわたりご使用いただいております。長期にわたるご採用の理由をお聞かせください。

安定した運用とトラブル時に即時対応してもらえるため、引き続き採用させていただいております。トラブルがあった際に、ラムダ製品が原因か不明な状態でもとりあえず連絡すると対応していただけるのは大きいですね。

インタビューの様子

Q4.2021年に新社屋移転に合わせてテロップシステムを更新されました。更新のポイントを教えてください。

引き続きラムダのテロップシステムにしたポイントは、CG作成ソフトの使いやすさ、素材移行が比較的容易にしやすいことが挙げられます。
また、新社屋移転でテロップシステム以外の各システムも同時更新となり、他システムとの連携を重視したトータルでの更新計画のため、他システム(営放、報道支援、OTC)との連携実績が豊富であることもポイントでした。
今回の更新でWEB発注、ノンリニア編集EDIUSや営放、OTCといった新しいシステムも導入して、作業が一連の流れで行えるようになりました。
以前はリモート回線がなく、サポート面で少々手間がかかっていましたが、ほぼオンライン化され、楽かつますます安心できるようになりました。
今回、オリジナルの要望としてラムダにお願いしたのはモニター数を削減するため、1台の端末で最大3台の送出機を制御することです。番組ごとにショートカットキーで系統数を切り替えて使用しています。
(インタビュアー注:放送技術2022年3月号特集2「新社屋設備の概要」にて、2021年の新社屋移転に伴う各システムの更新の詳細が掲載されております。)

制作現場イメージ

Q5.東日本大震災では通常時ではないことを多くご経験されたと思います。印象に残っていることをお聞かせください。

局員としては、もちろん変わらず毎日出社し、放送をする必要があります。災害情報はL字システムで出すことが主流ですが、当局も震災から数か月間はL字でたくさんの情報を出しました。東日本大震災を機にL字システムを導入した局も多かったと聞いています。
いつもより多い量のテロップを出す必要があり、CGチームはフル稼働でした。
一番の懸念事項は停電でした。新社屋移転時はシステムをUPS(無停電電源装置)につなぐ構成にしましたが、東日本大震災時の前社屋では可搬式のUPSだったため、バッテリーの交換が手間でした。

制作現場イメージ

Q6.テロップシステムにおける今後の展望とラムダへの要望をお聞かせください。

現在、テロップシステムに関しては2Kで更新しています。今後、地上4K放送が本格化するのか不透明ですが、2K、4Kのハイブリッドでのシステム構成を検討すべきだと考えています。
また、9月22日から東北のテレビ朝日系列局6局が共同で各局の番組をネット配信する『topo(トポ)』サービスが開始されました。現状は既存の番組を配信しますが、今後は配信専用の番組を制作することもあるかもしれません。そうなるとその番組用にテロップを制作する必要も出てくるかもしれません。 要望としては、更新して運用していくうちに多少使いづらいところが出てきます。すぐには難しいとは思いますがソフトウェア改修などを行っていただき、より使いやすいシステムにしていただきたいです。 また、ソフトウェアのバージョンアップについても、チェックを万全にし、お互いが意識しながらより慎重に進めていく必要があると思います。

新社屋には、社内を見渡せる会社見学のための階段や公開収録やイベントで使用される多目的ルーム、カフェ、売店などもありますが、中でも、誰でも入館可能な開放的なエントランスに置いてあるマスコットキャラクター「ぐりり」に笑顔で駆け寄る幼児の姿が印象的でした。
新社屋は、まさに地域共生を象徴する地域の中心的存在であると感じました。

新社屋の様子

このインタビューは2023年9月に行いました。

日本大震災の伝承板の様子

松島に置かれた東日本大震災の伝承板
「いつかどこかであったこと」ではなく「いつでも起こりうること」